Virtual Trial (バーチャル治験)とは?~メリットデメリットから事例紹介まで~

こんにちは。なーとし(@naaaaaaato2018)です。

さて今回は、「【医薬品開発の立場から考える】2019年以降の製薬業界の動向」でも取り上げました、Virtual Trial (バーチャル治験)について、お話したいと思います。

今後のキャリア形成に関して悩んでいる方は、「【FDAの承認状況から考える】CRAのキャリアプラン!!」、「【新人/若手社員向け】効率的に将来のキャリアプランを考える方法」の記事も合わせてご覧ください。

Virtual Trial(バーチャル治験)とは?

Virtual Trialとは、臨床試験に参加する被験者が病院へ訪問する必要なく、臨床試験に必要なデータがウェブ上でやりとりできるように組まれた治験です。

これまでもウェアラブル端末も活用することで、経時的に被験者のデータを収集している治験はありましたが、それでも被験者は定期的に医師のもとへ訪れる必要がありました。

そこでVirtual Trialを活用することで、(試験のデザインによっては)、被験者が病院へ訪問することなく治験参加から終了までを達成することができるようになります。

しかし、Virtual Trialも万能ではなく、対象疾患に応じて柔軟に使い分けることが重要です。

例えば、病気の急変リスクが少ない疾患や、高血圧や糖尿病などの慢性疾患に対しては相性が良いですが、癌などの急変リスクの高い疾患に対しては、あまり相性がよくないです。

とはいえ、通院で癌治療をされる方もいるわけですから決して不可能なわけではなく、有事の際のバックアップが構築できているかが肝だと思います。

Virtual Trial活用によるメリット・デメリット

被験者側のメリット

・治験を実施している病院から離れた場所に住んでいても参加が可能
(例えばアメリカは土地が広大であるため、日本よりも病院にアクセスしづらい地域があります。そういう地域に住んでいる方も、基準を満たせば治験に参加することが可能になります。)

・日常生活に支障をきたすことなく、治験に参加が可能
(治験では、治験実施計画書に規定された期間に医師のもとへ訪れるよう定められていますが、学校へ通う学生や仕事をしている人にとっては、スケジュール調整が難しい方も多いです。Virtualで完結することで、被験者側の負担を大きく軽減することができます。)

治験実施側のメリット

・治験実施期間の短縮に伴う、コストの削減
(被験者側のメリットでも述べているように、これまで治験に参加できなかった被験者候補群の方が治験に参加できるようになります。それにより、被験者の目標登録数達成までの期間が短縮できることが期待されます。それにより、治験のコストは削減し、特許が切れるまでの時間をより長く確保することが可能です。)

・被験者の脱落率の低下
(治験薬の有効性と安全性を確認する治験にとって、被験者が脱落せずに最後まで参加できることは非常に重要です。Virtual Trialを導入し、被験者の日常生活への影響を小さくすることで、被験者の脱落率を下げることができます。)

・治験で定められた評価項目をタイムリーに確認することが可能
(痛みが発生したタイミングや、血糖値、血圧をタイムリーに確認することが可能になります。医師やCRCが被験者に後日調査するよりも、精度が高いデータを収集することができます。)

デメリット

・使用している機器の不備
(Virtual Trialというのですから、基本全ての機器はWeb上で繋がっています。そのため、使用する機器に不具合が発生した時には、迅速に対応せねばなりません。そうでないと、不具合発生期間のデータが収集できないからです。)

・機器に不備が発生した際の対応
(不備が発生した際は、即時対応が必要ですが、被験者が遠方に在住している場合はタイムラグが発生してしまいます。加えて、使用している機器が海外からの輸入品だった場合は、即時対応が難しいケースもあるので、注意が必要です。必要に応じて、バックアップシステムを作る必要があります。)

・被験者に(コンピューター)リテラシーが求められる
(施設スタッフと直接のコミュニケーションがとりづらくなるので、施設スタッフからの電話やSkypeのサポートはありつつも、自分で説明書を読んで理解する能力が求められます。)

Virtual Trialに対応したITプラットフォームを提供している会社紹介

ここでは、主にニュースメディアで取り上げられている3社を紹介したいと思います。

①Science 37

Science 37 Website
Official Website of Science 37

サービス:Network Oriented Research Assistant (NORA)

遠隔医療を通じて、被験者が自宅にいながら治験に参加できるよう支援するサービスです。

なんと2015年時点でGenentech社の臨床試験に参画しています。

■特徴

AOBiome社のにきび治療薬開発から見るサービスの特徴として、レンタルしたiPhoneを駆使して、治験参加者はScience 37の皮膚科専門医とコンタクトをとれることが挙げられます。

また、完全にVirtual上で治験が完結できることを強くアピールしています。

Science 37社の創業が2014年ですので、驚きの速さで成長した企業と言えます。

但し、Virtual Trialには強みをもつものの、MedidataやIQVIAのような幅広いサービスを提供するのは難しいため、自社に治験のノウハウが蓄積した企業でないと、Science 37社のプラットフォームを活用するのは難しいかもしれないと感じました。

Science 37 and AOBiome Complete Industry-First Virtual Clinical Trial Through Metasite™ (Decentralized) Operating Model - Science 37
Science 37 conducts entire interventional Phase 2b “site-less” clinical trial, enrolling 372 patients across 10 states using its proprietary mobile telemedicine...
NORA活用社例 (Press Release調べ)

Lilly、Novartis、Sanofi、Genentech、Boehringer Ingelheim、大塚製薬等多数

対象疾患実績:群発頭痛、にきび、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、糖尿病など

②Medidata

Medidata Clinical Cloudの一部として、バーチャル治験のためのプラットフォームであるEngageの提供をしています。

サービス:Medidata Rave Engage

Engageは、ファイザー社が世界初のVirtual治験を実施した際に使用したシステムであり、元はMytrus社が提供していたサービスでした。

Medidata社が2017年にMytrus社を買収することで、Engageを獲得しました。

2018年2月にサービスを開始しています。

■特徴

・従来の病院で実施する治験や、Virtual上での治験を実施可能ですが、それに加えて、両者のハイブリッド型での治験も実施可能という柔軟性が強みです。
(但し、被験者と医師とのコミュニケーションツールに関する記載が見られないのが気にかかりました。)

・両者のハイブリッド型とは、病院ベースの来院とVirtualベースの来院の回数を適度に調整できることを指しています。このコンセプトは”Trial Dial”と呼ばれ、治験の効率化や、被験者の登録促進などに寄与すると期待されています。

Medidata Rave Engage Wins Scrip Award for Best Sponsor-Focused Technological Development in Clinical Trials | Medidata Solutions
Rave Engage Named Top Technology for Sponsors at 14th Annual Scrip Awards Medidata Wins Prestigious Industry Award  for Third Consecutive Year Scrip Award Celeb...

MedidataのHPを見ると分かりますが、Medidata Cloudという統合的プラットフォームを作成することで、治験計画から、データ収集・管理、分析までのサービスを提供することができます。

また、Medidataが提供しているRAVE EDCを採用している企業にとっては、新しくVirtual Trialを導入する際も、比較的スムーズに導入できるというメリットがあります。

Engage活用社例 (Press Release調べ)

WIRB-Copernicus Group(Mytrus社時代)、ファイザー(Mytrus社時代)、ノーベルファーマ、シミック

対象疾患実績:過活動膀胱(Mytrus社時代)、睡眠障害

③IQVIA

IQVIA Virtual Trials
By leveraging technology, clinical expertise and connectivity, IQVIA™ Virtual Trials can improve the pathway to the patient and accelerate study performan...
サービス:IQVIA Virtual Trials

遠隔医療を通じて、被験者が自宅にいながら治験に参加できるよう支援するサービスです。

2018年6月にサービスを開始しています。

■特徴

・患者中心の臨床試験をテーマに掲げており、遠隔診療を可能にするため、採血者や看護師らで構成されるLocal Care Teamと、責任医師やコンシェルジュらで構成されるVirtual Care Teamの両面から、被験者の臨床試験参加をサポートします。加えて、このシステムによって、医師がより多くの被験者を診れるなど、効率性も高まっています。

(”Virtual Trials – A more direct path to patients”より引用。)

(”Accelerate your timelines with patient-centered drug development”より引用。)

・100%Virtual上での治験も実施可能ですが、それだけでなく、従来の病院訪問型の治験と組み合わせた、ハイブリッド型での治験も実施可能です。

活用社例 (Press Release調べ)

公開なし

最後に(個人的感想と考察)

以下に、私の個人的感想と考察を書いていきたいと思います。

Science 37社のサービス開始は異常に早い

2019年2月時点において、Press Release等で公表されている情報だけを踏まえて考えると、Virtual TrialサービスはScience 37社が非常に強いということが分かりました。

しかし、具体的社名は公表されていないものの、Medidata社もIQVIA社も複数の会社に対してVirtual Trialサービスの提供を開始しているというニュースを目にしますので、Press Releaseで公開されている情報が全てではないという点はご留意頂きたいです。

なぜなら、Science 37社は創業から数年しか経過していないため、大手と提携を結んだという情報を外部に公開することは非常に重要ですが、Medidata社やIQVIA社は既に多くの顧客と関係を持っており、それらを全て外部に公表する必要性はないからです。

上記を踏まえた上でも、Science 37社は他社よりもVirtual Trialの実績を積んでいることはほぼ間違いないです。

Medidata社やIQVIA社がVirtual Trialのサービスを開始したのが2018年であるのに対して、Science 37社は2015年時点でGenentech社へVirtual Trialのサービスを提供しています。

これだけ早いと、先行者利益をさぞ享受できたと思います。

現時点では、思ったより各社のサービスに大きな違いはないかもしれない

これは私の個人的感想です。

というのも、Virtual Trialと言うと大層な名前に聞こえますが、本質はWeb上でデータを管理し、被験者と治験スタッフが遠隔でコミュニケーションを取れることになります。

そして、治験を実施するうえで、Virtual化したいポイントは主に以下の箇所になります。
(⇒以降が、Virtual Trial導入で解決する方法になります。)

・医師から被験者への治験に関する説明&同意説明文書の取得
⇒ビデオ通話や、eConsent(被験者からの同意取得を電磁的に行うこと)で対応可能。

・日常的なデータの収集
⇒ウェアラブルデバイスからの情報をCloudで管理することで対応可能

・体重や血液検査、および診察のための来院
⇒看護師や採血者が訪問する&医師とのビデオ通話で対応可能

・(おまけ)病院内での治験薬の温度管理
⇒病院での治験薬の温度管理は不要になる、

このように考えると、どこのサービスも似通うことが推測できると思います。

サービスで差をつけるためには、治験の実施体制の万全さ、データの連結具合、デバイス等の不具合の発生頻度の低さ、他社のデバイスやシステムを併用したい時の対応力が重要だと思いました。

あくまで予想に過ぎませんが、各製薬会社は試験ごとに各社のサービスを使用し、どこのサービスがコストパフォーマンスに優れているかを検討している時期なのかもしれません。

もしそうであるならば、その結果が表れるには、あと数年の歳月が必要になると思います。

自社サービスの説明に関して、広報部門の重要性を実感

余談ですが、今回の調査を通じて、「自社サービスについて、HP上でどこまで詳しく説明できるか」という点に関して、広報などの部門の重要性を強く認識しました。

例えば、Medidata社のEngageに関しては、HP上で「被験者と医師や施設スタッフ間の遠隔でコミュニケーションをとるツールや実施体制」についての言及が見受けられませんでした。

100%Virtual Trialも可能と示している以上、ツールがあることは間違いないので、治験の実施体制に関する記載(看護師が訪問するのか等)があった方が、より分かりやすいのではないかと感じました。

Science 37社に関しては、説明動画は非常に分かりやすかったのですが、サービスの説明や動画以外の図に乏しい印象を受けました。

一方でIQVIA社に関しては、Virtual Trialを実施する際の体制が図示されていて、非常に分かりやすかったです。

各社のPress ReleaseやHPを確認しましたが、提供されるサービスの内容理解や活用するメリットについては、IQVIAが一番分かりやすいと感じました。

このように、HP上に記載されている内容の分かりやすさによって、サービス自体の印象が大きく変わるというのは、非常に大きな収穫でした。

ここまでで、なーとしの個人的考察や感想は終えたいと思います。

各社が提供するVirtual Trialのサービス比較については、十分に検討できたとは思っていないので、引き続き調査をしていきたいと思います。

ではではまた~

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