差別化が難しいCRO業界の成長戦略を考える

こんにちは。なーとし(@naaaaaaato2018)です。

さて今回は、差別化が難しくなっているCRO業界における成長戦略を考えてみたいと思います。

大手CROが提供できるサービスに大きな違いはない

今後伸びるのはCRO業界!?」の記事でもお話していますが、CROはサービス業です。

噛み砕くと、「クライアント(製薬企業、医療機器メーカー)が製品を開発できるよう支援する」ことが仕事です。

近年は異業界からの参入もあり、CROの潜在的クライアントの数は増え、種々の製品開発に携わることができるようになってきました。

但し、CROが提供できるサービスが既に飽和しかけているのは見過ごせない事実です。

これまで発展途上であったCRO業界では、提供できるサービスを増やすことで差別化を図ってきました。

ICCC(国内治験管理人)をやったり、Global試験に強くなったり、FFSモデルとFSPモデルを作ったり、臨床開発部門だけでなく安全性情報部門やデータマネジメント部門を作ったりと、提供できるサービスを拡大してきたわけです。

しかし、ある大手CROが提供できるサービスは、他の大手CROも提供できるようになっているため、サービスの横展開による差別化は難しくなってきました。

大手CROが軒並み同じサービスを提供可能となると、Feeを下げて競合優位性を高めるという、悲しい共喰い状態を引き起こすことになります。

それを避けるにはどうすればよいのでしょうか?

個人的には、「現場で働く社員の質の向上」ではないと思っています。

誤解なきように補足しますが、社員の質の向上は重要ですし、それを怠る会社に未来はないと思います。
(「今後CRO業界で生き残るために必須な思考転換」の記事でも書いていますが、社員個々の能力値が高いことは非常に大切です。)

しかし、人材の流動が激しいCRO業界において、優秀な社員を自社に留めておけるような抜きん出た会社は見受けられません。
加えて、今後はRBMの導入等を通じて、人数は大幅に縮小しますので、質はおのずと高まり、粒感は似通ってくると思います。

まとめますと、社員の質の高さを定量的に評価するのは難しく、社員の質を向上すれば競合優位性を高められると考えるのは難しいと思います。

そこで私が提案したいのは、「当初の契約期間内に症例登録満了を達成したかどうか」で差別化していくことです。

今後CROに求められる要件は、当初の契約期間内に症例登録を満了できるかどうか

先ほどお話したように、大手CROが提供できるサービスに大きな違いはなく、所属する社員の質も徐々に縮まっていくと思います。

しかし、CRO業界において、他社と定量的に比較できる重要なポイントが1つあります。

それは、被験者の登録スピードです。

製薬会社、医療機器メーカーにとって、延長せず契約期間内で症例登録が完了することは非常に望ましいですが、それよりも、台頭しているベンチャー企業からの信頼を獲得できる点が非常に魅力的です。

今後、CROのクライアントの内訳の中でベンチャー企業が占める割合は増えていくと思います。
(詳しくは、「【医薬品業界】全世界における開発中製品の7割が、製薬ベンチャー発である!」の記事をご覧ください。)

ベンチャーの方とお話させて頂く機会もあるのですが、臨床試験の問題点として、「期間延長の度に追加の費用が発生するため、金銭面の圧迫が非常に厳しい」というご意見をよく頂きます。

潤沢な資金のないベンチャー企業側からすれば、臨床試験をお願いする度に追加の費用が発生するCROへ依頼するわけがないのです。

ベンチャー企業からのリピート率を高めるためにも、「期間内での症例登録満了が達成できるかどうか」がCRO業界における最大の差別化ポイントになると思います。

では、期間内での症例登録を満了するために、最も精度が高い方法とは何でしょうか?

月並みですが、私はリアルワールドデータ(RWD)の活用だと思います。

そして、データの活用法の具体案として挙げたいのは、「CROは仲介業者としてのスタンスを強くすればよいのではないか?」ということです。

CROの新たなビジネスモデルとしてリボンモデルを提唱したい

まずは「CROは仲介業者としてのスタンスを強くすればよいのではないか?」について、お話いたします。

私の意味する仲介業で分かりやすいのは、リクルートのリクナビです。
(新卒採用担当者と就活生をマッチングするサイトです。)

ビジネス用語でいうと、リボンモデルというビジネスモデルとなります。

(引用:XtoBtoXのサービスを作るなら知っておきたい、リボンモデルを使った両面ペルソナの作り方

話は逸れますが、このモデルの恐ろしさは、クライアント(企業)を骨抜きの状態にしかねないところにあると思っています。

リクナビを介した新卒採用活動に慣れ過ぎて、一から自社内で新卒採用のスキームを組めなくなってしまった企業も多いと聞いています。

ある会社をリクナビがないと新卒採用が満足にできない状態にしてしまうなんて、強すぎて恐ろしいです。。。笑

話が脱線してしまったので、話をCROに戻します。

言い方は非常に乱暴ですが、製薬会社と治験参加希望者のマッチングの場をCROが提供すると考えてみるのはどうでしょうか?

RWDを保有しているCROであれば、全国の病院にどんな患者さんが通院しているのかをある程度把握できるので、クライアント側の治験の選択除外基準と治験参加希望者をマッチングさせることは難しくないと思います。

既にIQVIA社が、一方向的な形で始めているようです。

【IQVIAサービシーズジャパン】CROが被験者募集戦略‐ビッグデータ活用で成果|薬事日報ウェブサイト

しかし、治験参加希望者側からのアクションが一切ないため、治験への関心度が不明であることが難点です。

リボンモデルが構築できれば、治験参加希望者側が登録をした時点で参加意思がフィルタリングされるので、不遵守や逸脱が少なく、データの質が上がります。

しかし、これらの青写真はCROがRWDを要しているかどうかが肝になります。
(そして、この青写真の最終形態が昨今話題のVirtual Trialsだと思います。)

ですので、これまで私はCROは次世代医療基盤法の認定事業者となるべきだと思い続けています。
(次世代医療基盤法に関しては、「MID-NETと次世代医療基盤法について簡単にまとめてみた」の記事をご覧ください。)

日本における懸念点としては、「個人情報保護法」がどこまで影響を持つかどうかです。
CRO側から治験参加希望者の情報(検査値etc)を開示すると問題ですが、治験参加希望者側から同意の上情報を登録する形であればよいのだろうか、、、とか考えています。
(SNS使用時の住所登録に近いイメージです。)

また、検査値は変動しますので、登録頂いた治験参加希望者側からの定期的な検査値Updateをどう解消するか等、問題はまだまだあるとは思います。
しかし、各種データの連結を目指す未来であれば、必ず解決できると思っています。

日本のDBの統合は難航しておりますが、将来的(10年以内)にはリボンモデルに近い形が出てくると思いますし、「認定事業者となったCROはあるのか?」、「認定事業者と組んだCROはどこか?」など、注目すべき点は多いです。 

CROのみならず、製薬業界として、データを活用していこうという動向が強く見られますが、データが重要なのではなくて、データを活かしてどうconnectivityを高めていくかが重要だと思います。

そして、Amazon、Google、UBERはインターネットのHyperconnectivityを活かし、いち早くプラットフォームを構築したことで大きな成長を遂げました。

プラットフォームビジネスは、いち早く構築することでネットワーク効果を活かし、シェアを獲得することができます。

そのため、Virtual Trialsを目指す医薬品開発業界においても、いち早くプラットフォームを構築できたCROが覇権を握ると思います。

~(2019/3/10追記)~

Buzzreach社が治験の情報に関して、患者・医療関係者の双方向に展開するサービスを公開したようです。

TechCrunch
TechCrunch | Reporting on the business of technology, startups, venture capital funding, and Silicon Valley

SMTでは患者自身や家族の環境や状況に合った治験情報を調べることができ、近隣で該当する治験を実施する医療機関があるかどうかも検索可能。かかりつけ医院での治療だけではなく、別の選択肢としての治験を検討することができる。

ユーザーが気になった治験・臨床試験には応募も可能。ウェブ上で簡易的なスクリーニングを行った結果、条件に合えば医療機関の治験コーディネーターと連絡が取れるようになる。

一般向けのSMTに対し、今日正式リリースされたPuzzは「製薬企業/医療機関向け」かつ治験情報を「発信」するためのプラットフォームだ。

Puzzでは企業/医療機関が治験情報を掲載して、一般ユーザーや治験情報を必要とする患者に向けて情報を発信し、参加申し込みまで受け付けることができる。

Puzzでは医療機関単位だけでなく、プロジェクト単位で治験情報を登録でき、それぞれに細かい設定や情報展開が可能となっている。Puzzに治験情報を掲載することで、治験の被験者募集を専門的に行う企業やヘルスケア系メディア、患者会などに対して、情報発信を一度で同時に行える。

また、Puzzに掲載された治験情報はSMTにも掲載されるため、新しい治療法を求める患者と治験情報とをマッチングすることもできる。

まとめますと、

SMT⇒患者側が、現在実施中の治験を検索することが可能になる。
Puzz⇒企業/医療機関側が、現在実施中の治験の情報を発信することが可能になる。

ということになります。

これは、上で提唱しているリボンモデルを実現する体制が整ったということです。

Buzzreach社と同様のサービスを提供する会社が今後どれだけ出てくるのか、もしくはどこかのCROが買収するのかどうか、動向が気になります。

新たな情報が出ましたら、また追記しようかと思います。

ではではまた~。

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