日本の医薬品市場も自由価格制度にせねば、ドラッグラグが広がってしまう

こんにちは!

さて、今回は「製薬企業にとって、もはや日本は魅力的な市場ではない」ということについて、お話したいと思います。

今のままですと、

「海外では使用可能な最先端の医薬品が、日本では使用できない。」
「海外では治せる病気が、日本では治せない。」

というケースが増えてしまいます。

そんな悲しいことを引き起こさないためにも、この記事を通じて意見を発信したいと思います。

日本VSアメリカで見る薬価制度の違い

日本とアメリカにおける医薬品の価格の決まり方について、以下に簡単にまとめました。
(医薬品には、医療用医薬品と一般用医薬品の2種類がありますが、ここでいう医薬品は医療用医薬品についてのみ言及しています。)

日本

薬価の決まり方:公定価格制度

製薬企業が日本で新薬を販売するためには、薬価基準に収載される必要があります。そこで、「類似薬はあるかどうか」、「原材料費、製造経費はいくらかかるか」等を判断基準に、新薬の価格を国が決定します。

また、一度決まった薬価は一定ではなく、2年に1回、価格の見直し(薬価改定)が行われ、年々薬の価格は下がっていきます。(2021年度から毎年薬価改定が実施される予定です。)

アメリカ

薬価の決まり方:自由価格制度

製薬企業が新薬を発売する際の価格は、自由に決定する(製薬企業が裁量で決定する)ことができます。ここには市場の原理が働くため、類似薬が既に市場に存在している場合は、価格を高くしても売れないことが分かります。

「患者さんにとっての適切な医薬品価格は、市場競争の下で決まる」というアメリカらしい(?)考えが根底にあるのだと思います。

 

ここで非常に重要であるのは、「日本では、国が薬価の決定権を持つ」のに対して、「アメリカでは、各製薬会社が薬価の決定権を持つ」ということです。

「誰に決定権があるか?」ということが、市場競争を考えるうえでどれほど重要であるかを、次にお話してまいります。

日本の医薬品市場はマーケット外の要因(政府)の影響が大きいため、製薬会社にとっての重要度が下がっている

突然ですが、オプジーボという薬はご存知でしょうか。

オプジーボとは、免疫チェックポイント阻害薬という分類の抗がん剤です。今では、キイトルーダやテセントリク等の競合薬剤が出てきておりますが、発売当時は初の免疫チェックポイント阻害薬として、非常に注目されていました。(実際、非常に効果的な薬剤でもありました。)

しかし、日本政府は、度々オプジーボの薬価を下げてきました。

オプジーボ、11月から再び値下げ 約4割
厚生労働省は22日、小野薬品工業のがん治療薬「オプジーボ」の薬価を下げると発表した。今年度から導入された新ルールに基づくもので、現行の薬価と比べて38%の引き下げになる。11月から新価格を適用する。

勿論、競合薬の台頭が著しい、初めの薬価が高い等の背景があったのは事実だと思いますが、発売開始から4年程度で、オプジーボの価格が7割以上下がってしまったという事実を、製薬会社はどう受け止めるでしょうか?

市場競争の結果であれば受け入れざるを得ないと思いますが、マーケット外の要因(政府)によって薬価が下げられてしまったという事実は、製薬会社が日本市場に対して確実にネガティブなイメージを持つ結果になったと思います。

自由価格制度の導入(市場化の促進)をせねば、ドラッグラグは広がってしまう

今後伸びるのはCRO業界!?」の記事でも触れていますが、日本の薬価抑制の圧力の強さの影響も出ているためか、先進国では唯一、日本だけがマイナス成長になる可能性があるとの見通し結果が示されていました。

このままでは、製薬企業が新薬開発戦略を考える際に、日本が後回しにされてしまいます。

https://twitter.com/naaaaaaato2018/status/1035449780208513025

せっかく縮まったドラッグラグが、また拡がってしまうでしょう。

「海外では使用可能な最先端の医薬品が、日本では使用できない。」
「海外では治せる病気が、日本では治せない。」

そんな悲しい未来が現実になってしまいます。

【医薬品業界】全世界における開発中製品の7割が、製薬ベンチャー発である!」の記事でもお話しているように、有望なシーズはベンチャーから生まれているケースも多いですが、中長期的には、この市場環境ですと日本発のベンチャーも生まれづらくなると思います。

それを防ぐための解決策は、日本も自由価格制度を導入することだと思います。

欧州の国を参考にしよう!

日本のように国民皆保険制度で莫大の医療費を国が負担している場合は、確かに薬価が高いと財政を圧迫してしまうため、対策は必要だと思います。

(「予防薬の市場規模から考える、製薬会社が予防医療へ参入しにくい理由」の記事でもお話していますが、日本のように予防医療が普及しにくい国においては、国民が最適な治療を受けられる環境の整備は非常に重要です。)

その際に参考にすべきなのは、欧州の国家かもしれません。

日本と同様の「国民皆保険制度に近い社会保障政策」を持ち、かつ「自由薬価制度」を持つ国が参考になると思っています。

具体的には、「ドイツ・フランス」でしょうか。(参考資料はこちら。)

他にも、社会保障政策が充実していると言われている北欧国家も参考にできると思います。

日本で自由価格制度が導入されるとしたらいつか?

私が考える一番現実的な導入時期は、残念ながら「日本と世界との間でドラッグラグが広がった時」だと思っています。

というのも、「「マーケット感覚を身につけよう」の内容が刺さったので感想を書いてみた」の記事で紹介した本にも書かれていますが、「規制は消費者の市場選択により打破される」からです。

具体例で考えてみる

例として、ちきりんさんがTwitter上で出されていたお題を挙げます。

https://twitter.com/InsideCHIKIRIN/status/1036827281304342528
https://twitter.com/InsideCHIKIRIN/status/1036827508413411329
https://twitter.com/InsideCHIKIRIN/status/1036827856582656000

概要は、就活ルール廃止を=21年春以降入社から―経団連会長」と「東大・京大生の人気企業ランキング」の結果を受けて、「マーケット感覚を身につけよう」の書籍内で取り上げた事例と同じことが起きていると考えられますが、それは何でしょう?というお題です。

私は、このお題の回答は、「羽田空港で国際便が発着できるようになった経緯」だと思っています。

Twitterのお題ですと、「経団連のルールに従う必要のない有力な会社(=経団連に所属していない会社)へ優秀な学生を根こそぎ取られてしまい、経団連に所属している企業が優秀な学生をとることができなくなってしまったため、経団連のルールを撤廃せざるを得ない」と理解しています。

やはり規制は消費者の市場選択により打破されそうだ

上記の経団連のルールのような、

「このルール本当に必要なのか??」

レベルのものでも、実際に撤廃の動きが見られるまで非常に長い時間を要するのです。
(就活の時に、経団連のルールにポジティブな印象持ってた人いました?笑)

つまり、日本の国民皆保険制度を維持するための公定薬価制度が改定されるには、「消費者の市場選択」を駆使しても、さらに長い時間を要する可能性がありそうだということです。

(ここでいう消費者の市場選択とは、製薬企業が新薬開発に最適な国を選び、日本を後回しにする状況を指しているとお考え下さい。)

裏を返せば、消費者の市場選択が起きるまでは、日本の制度は変わらないのではないでしょうか。。。非常に残念ながら。。。。

しかし、そんな予想はぜひ外れてほしいので、一刻も早く日本という市場が、世界的にも魅力的な市場に戻ってくれることを願っています!!

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