こんにちは。
さて今回は、疼痛薬の市場規模や臨床試験成功率について、お話してまいります。
実は、疼痛薬市場については私は詳しくないのですが、今回BIOのレポートを見て衝撃を受けましたので、これは共有しなければと思い、記事を書きました。
世界で高齢化が進んでいる中、ペインマネジメントの重要性は高まる一方ですが、臨床試験の成功率は非常に厳しいものでした。。。
そんな疼痛薬市場の現状をお伝えしたいと思います。
以下3行まとめです。
・アメリカでの痛みに関する医療費は、2500億ドル超え
・疼痛薬の臨床試験成功率は約2%
・資金調達の難しさもあり、ベンチャーでの疼痛薬開発は難しい
それではさっそくまいりましょう。
アメリカでの痛みに関する医療費は、総額2500億ドル超えである
以下のグラフをご覧ください。
(BIOのVolume II:Pain and AddictionTherapeuticsから引用)
慢性的な痛みに苦しむ人の数は、アメリカ単体でも1億人に上り、痛みに関するトータルの医療費は2500億ドル超えをしています。。。。(もちろん薬剤費だけではありません。)
2011年時に痛みに関する医療費の見積もりは、6350億ドルと見積もられており、心疾患(3090億ドル)、がん(2430億ドル)、糖尿病(1880億ドル)を上回ると推計されていました。(参考文献はこちら)
実際にも、痛みに関する医療費の総額は他の疾患よりも高く、薬剤を含め医療費の抑制するためのビジネスチャンスは多くあることがわかりました。
話は少し逸れますが、日刊薬業より「1000億円超の“ブロックバスター”消滅 17年度国内売上高ランキング」という記事が公開されました。
上記記事によると、2017年度医療用医薬品国内売上高ランキングの1位は、ファイザーのリリカ(疼痛治療薬)だったんですね。
最初この記事を見た時は、「なぜ疼痛治療薬が1位なんだろう?抗がん剤じゃないの?」と思っていたのですが、やっと理解できました。(ちなみに僅差の2位は中外製薬のアバスチンでした。)
まとめますと、Pain Market自体は非常に大きかったということです。
疼痛薬の臨床試験の成功率は約2%であった
以下のグラフをご覧ください。
(緑:疼痛の新薬候補化合物、青:全疾患の新薬化合物)
(BIOのVolume II:Pain and AddictionTherapeuticsから引用)
グラフより結果は明らかですが、全疾患と比較して、ほぼ全Phaseにおいて成功率を大きく下回っています。
個人的には、FDAによる承認を得られる可能性が56%と比較的低いのが気になりました。(少し調査しましたが原因は不明です。ご存知の方教えてください。。。)
つまり、Phase3を突破しても、当局の承認を得られる可能性は半々であるというのは、重要なポイントとして覚えておく必要があると思います。
このような結果より、疼痛薬の臨床試験の成功率は約2%という結果が得られました。
抗がん剤の成功率は5.1%ですので、半分以下の成功率となります。(抗がん剤の臨床試験成功率に関しては、「【医薬品開発】臨床試験から承認までの成功率は9.6%!?」の記事もご覧ください。)
疼痛薬の開発の難しさをご理解頂けたのではないかと思います。
ベンチャーでの疼痛薬の開発は難しいか
以下のグラフをご確認ください。
(BIOのVolume II:Pain and AddictionTherapeuticsから引用)
このグラフを見ると一目瞭然ですが、疼痛薬の開発には資金調達が難しいことが分かります。Oncology領域の1割程度でしょうか。
臨床試験の成功率2%ですからね。。。。VCが投資したくない気持ちもわかります苦笑
加えて興味深いのが、疼痛薬に関しては新薬の開発というよりも、改善(剤形変更等)が多いという点です。
グラフのみの判断ではございますが、現状は比較的後ろ向きな姿勢で研究開発が行われているのが現状でしょうか。
こういう状況を打破できるのは、やはりベンチャー企業といったところですが、資金調達がネックです。
そのため、利益を出し始めているベンチャー(他の疾患で有効や新薬を導出済み等)でないと、疼痛薬の開発は難しいのかなと感じました。
市場としても大きく、当たればブロックバスターになりうるだけに、今後の開発が期待されるところです。
日本国内のベンチャーですと、ラクオリア創薬やAskAtが疼痛薬の開発に取り組まれていますが、まだ前臨床、Phase1の段階ですので、今後に注目しましょう(2018年7月時点)。
ラクオリア創薬やAskAtの臨床試験の結果が出た際の、株価の動きにも注目していきたいと思います。
それでは最後に3行まとめを記載します。
・アメリカでの痛みに関する医療費は、2500億ドル超え
・疼痛薬の臨床試験成功率は約2%
・資金調達の難しさもあり、ベンチャーでの疼痛薬開発は難しい
ではではまた~。
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