こんにちは。
今回は、今後開発が期待されるがん治療薬の一つとして、”間質細胞”のお話をしていきたいと思います。
以下、3行まとめです。
・間質細胞とは、がん微小環境を構築する
・がん微小環境とは、がんが生存しやすい環境のことを指す。
・間質細胞を標的とした治療薬は、競合がいないためチャンス大
それではさっそくまいりましょう。
はじめに
現在は市場に出ている抗がん剤は、以下の3種類に大別することができます。
■代謝拮抗薬
■分子標的治療薬
■免疫チェックポイント阻害剤
それぞれがどのような作用を有しているかは、「治療薬の効かないがん治療薬がなぜ多いか(前編)」をご覧ください。
今後数年間は、この流れが続いてくと思います。
しかし、私は将来的に新たな作用機序の薬が開発されると思っています。
そのうちの1つが間質細胞を標的とした抗がん剤です。
間質細胞とは??
間質細胞とは、上皮細胞を支える支持組織を構成する細胞の総称のことです。(例えば、免疫細胞(マクロファージ)、繊維芽細胞、血管内皮細胞などが挙げられます)
逆に上皮細胞とは、皮膚の細胞や、肝臓、胃、食道、腸などを実質的に構成する細胞のことです。
つまり、上皮細胞同士の間にいて、支えているのが間質細胞ということになります。
そして、血液がんなどを除けば、私たちがイメージする”がん”とは、全て”上皮細胞ががん化した細胞集団”のことを指します。
同様に、これまで開発されてきた抗がん剤は、”上皮細胞ががん化した細胞集団のみ”を標的にした薬剤ばかりです。
では、間質細胞は本当にがんの発生や進展に関係ないのか、、、、??
いいえ!!!大ありなのです!!!!
それは、間質細胞が”がん微小環境”を構成することと関係しています。
がん微小環境とは??
がん微小環境とは、「間質細胞が作る、がんが育ちやすい環境」を意味しています。(例えば、がん細胞が育ちやすいように増殖因子を分泌してあげるとか、免疫細胞の攻撃からがん細胞を守ってあげるとかが挙げられます。)
(また、がん微小環境が、”がんの多様性”を生む1つの原因でもあります。がんの多様性に関しては、「治療薬の効かない”がん”がなぜ多いか(後編)」の記事をご覧ください。)
近年、”がん微小環境”に関する研究が進んできましたので、いくつか例をあげさせて頂きます。
実際、基礎研究レベルでは、上記のようながん微小環境ががんの進展に与える影響というのは、最近かなりホットな話題となってきています。
しかし、創薬に結び付けるには、まだ少し時間がかかるようです(一部の製薬会社ではすでに臨床試験が始まっているものもわずかにありますが。)
理由の一つとしては、これまでは微小環境をターゲットにしたとしても、候補薬剤が本当に効いているのかの評価が難しかったことが挙げられます。
しかし、最近はオルガノイド培養法や流体デバイスの開発に伴い、組織の複雑性や、臓器間のADME問題も、かなりin vitroで追えるようになってきました。
従って、有用な細胞培養法やデバイスの開発に伴って、がん微小環境(間質細胞)を標的とした治療薬を開発するための基盤が整ってきているのです。
間質細胞を標的とした治療薬の開発が期待される
これまでのがん治療薬の標的はがん細胞自身であり、がん微小環境を構成する間質細胞は標的にされていませんでした。
間質細胞を標的とした治療薬の評価系を構築するのが難しかったという問題点もありますし、何よりがん細胞を標的とした抗がん剤を(現在と比較して)容易に開発できていたという背景もあります。
しかし、がん細胞を標的とする抗がん剤の開発が非常に難化している現在、間質細胞を標的にする治療薬が出てくる絶好のタイミングかもしれません。
がん微小環境は、比較的新しい分野ということもあり、競合が少ないのが現状です。(いわゆるブルーオーシャン笑)
そして重要なメリットが一つ。。。。
がん微小環境を標的とする薬剤は、既存の抗がん剤と併用することで効果が期待できるという点です。
自社の開発品と競合することなく、むしろ組み合わせることでより効果の高まる薬剤として、市場に出すことができるわけです。
その際には、もちろん臨床試験のデザインが重要になります。
(臨床試験のデザインの重要性に関しては、「臨床試験で薬剤の価値を高める!?」をご覧ください。)
今後がん微小環境を標的とする薬剤がパイプラインに上がっている製薬会社が出てきたら、株価も上がるチャンスかもしれません!!
私も積極的に各社のパイプラインは見ていこうと思います。
それでは最後に3行まとめを書いて今回の記事を終了したいと思います。
・間質細胞とは、がん微小環境を構築する
・がん微小環境とは、がんが生存しやすい環境のことを指す。
・間質細胞を標的とした治療薬は、競合がいないためチャンス大
ではではまた~~