こんにちは。
昨今、他社とアプリの共同開発を通じて、大手製薬企業が服薬や診断のサポートを行い始めていますが、予防薬(ワクチン除く)やサプリの開発を行っている製薬企業はあまり多くないと思います。
そこで今回は、予防薬(サプリ)の市場規模を推定することで、大手製薬企業が予防医療へ参入すべきかどうか考えたいと思います。
(尚、製薬企業のVisionとかを全て度外視して、市場規模のみで考えますので、その点ご容赦ください。)
予防薬の市場規模を推定してみる
Twitterで以下のようなディスカッションがありました。
予防薬の臨床試験を組むなら、データドリブン型のPRT(登録から事象発生までの期間を比較する試験)になると思いますが、被験者の選択基準が非常に難しいです。
絞り過ぎると売れないですし、広げ過ぎると試験が終わらないという…
だから、サービスやサプリなどに手を出しているのが実情でしょうね。
— なーとし@医薬関連情報発信します! (@naaaaaaato2018) 2018年8月6日
色々と期待・見越して、大衆薬を手放さない会社もありますし、アミノ酸を売る会社もあります。ただ、エビデンスを作るという気概は必要だとは思いますし、持って欲しいマインドではありますね。第2のグルコサミンにならないように。
— Moogle (@Moogle_PhC) 2018年8月6日
結論は、予防薬の臨床試験は評価項目の策定と被験者の選定基準が難しく、一部の製薬会社がサプリメントを販売しているのにとどまっているのが現状ということでした。
では、仮に上記のように予防薬をサプリの形で販売可能となった際に、製薬会社が予防薬開発への参入するのかどうか、予防薬の市場規模を推定することで考えてみましょう。
ケーススタディ
前提条件
対象薬:NMNのような細胞の再活性化を促すAnti-aging薬を想定(ただし、機能は明示できない)
(予防薬と一言にいっても対象が広くなりますので、ほぼ全ての人が対象であり、一番パイが大きいAnti-aging薬を想定することにしました。)
(注:後程、NMNが1日当たり30円で摂取できる計算になってますが、突っ込まず、そっと見守ってください笑。実際のNMNは50倍以上高いです。)
対象企業:大手製薬企業
販売経路:一般的なサプリメントのような形式で販売する想定
年間の市場規模の計算方法
(1年間の市場規模)=(購入者数)X(購入単価)X(購入頻度)
と定義することにしました。
購入者数
30歳から~85歳が購入意欲を持つ層とします(全人口の7割と仮定。)
2016年10月1日時点では、1億2693万3千人のため、8885万3千人が対象となります。
健康意識も高まっているので、8885万3千人のうち、約0.1割が日常的に摂取すると仮定しますと、88万8千人が購入者数となります。
(「割合低すぎない!?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、日常的にサプリを摂取している人って、100人に1人(0.1割)もいないんじゃないかと個人的には思います。)
購入単価
最近何かと話題のグルコサミンを比較対象にしました笑。
Amazonの売れ筋ランキング1位は、90日分で2582円でした!!
わかりやすく分解しますと、1日当たり約30円です。
(この数値は、「健食市場、2%増の1兆2,270億円 高齢者需要に陰り。ターゲットは50代」の記事を見ても大きく乖離はないかと思います。)
購入頻度
摂取頻度を6割(5日間のうち、3日間は摂取)と仮定しますと、
365×0.6=219
ですので、平均年間219日分のサプリを購入するという計算になります。
1年間の市場規模
88万8千(人) X 30(円) X 219(日)=58億3416万円
この値に自社製品のシェア率をかけることで、自社の売上高を算出することができます。
(尚、糖尿病治療薬の国内市場規模は約5000億円です。)
考察
ベンチャーや中小企業が狙うのはあり
Anti-Agingを示唆したサプリですら、この市場規模(60億未満)ですので、各疾患毎の予防薬市場は、半分以下でしょう。
もしサプリを販売するとすれば、一般への販路を有している大塚製薬や大正製薬が可能性高いですが、現実的ではなく、少なくとも大手製薬企業は参入しないと思います。
(大正製薬のリポビタンD単体の売上で547億円でした。。。。)
(尚、市場規模を小さめに見積もったり、大手製薬企業の立場を踏まえたターゲット層の設定を行ってますが、大手が参入しないという結果自体は変わらないと思います。)
また、現在のNMNのように、現状製造コストが高く、富裕層にしかリーチできないサプリ(?)のようなものもありますが、一般的に普及するわけではないでしょう。
逆にベンチャーや中小企業が富裕層をターゲットにするのはありだと思います。会社員としても、ストックオプションが活用できる会社であれば、サプリが当たれば大金を獲得もできますし。(詳細は、「【会社員が大金を得る一番現実的な方法】ストックオプションを活用せよ!」の記事で説明しております。)
予防医療の普及は、国民皆保険制度の見直し無しにはありえない
今の日本は、国民皆保険制度により「予防よりも、治療の方が安くすむことも多い」こともあり、思っている以上に健康への意識は低いようです。
(例えば、生活習慣病にならないために、高いお金をかけ、辛い思いをしながらジムへ行くよりも、生活習慣病になって薬代400円払う方がコストが低いというのが日本の現状です。)
そのため、国民皆保険制度が大幅に改訂されない限り、大手製薬会社の参入は可能性が低いと思います。
(尚、国民皆保険制度に関する上記考察は、日本人のVoicyチャンネルの1つである、ベンチャー支援家Kさんの「ベンチャーニュースで言いたい放題」中の「予防医療の難しさを言いたい放題」を参考にしました。)
以上まとめますと、ロシュが診断薬と抗がん剤を組み合わせて販売効率を上げているように、各製薬会社は「自社の薬剤+アプリによる服薬・診断のサポート」をセットで推進していくことで、①○○病治療薬市場のシェア率を高める・②臨床データを収集することに重きを置いているのかなと思います。
少し話は逸れますが、「国内における医療用医薬品の売上:一般用医薬品 = 10:1」ですからね。医療用医薬品市場の大きさに飲まれる状況はまだしばらく続くと思います!
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